2006年に、谷口昌良が寺院の一角に瞑想のための空間として構えた「空蓮房」。
そこで開かれた写真展示を振り返り、その活動と書かれた言葉に思いを巡らす。
谷口が仏教と写真術を同時に考えて語る理由や意義を、畠山直哉によって 「翻訳」し「解釈」したものでもある本文は、いま写真芸術に最も必要とされることは何なのか、
その深化した議論を喚起するための問いかけであり、「祈り」である。
「世の中には数多の言葉や表現がある。だがその中でも、たとえ表面上は『簡単な』ものに見えたとしても、
結局はこのような『簡単ではない思考』の真実に触れようとしている言葉や表現だけが、
主義主張や立場の違いを超えて、また時代を越えて、語り継がれるものになっているとは思わないだろうか。
その真実はまた、僕たち全員を深いところで動かしている『生の動機』あるいは『リアリティ』と
呼ぶべきものに繋がっているとは、思わないだろうか。その真実を求める心の動きを、
たとえば『祈り』や『たましい』と表現して、どこが間違いだろうか。」
畠山直哉 序文より
【目次】
「空点からの放光線」について
「日本人であることの写真」について
対話 谷口昌良×畠山直哉
空蓮房 Archive・展覧会一覧
【掲載作品】
畠山直哉・ギャリー・ウィノグランド・レオ・ルビンファイン・須田一政 他 展示風景多数
・谷口昌良
1960年東京生まれ。「空蓮房」を敷地内に構える蔵前・長應院の住職。 1979年に渡米後、写真家レオ・ルビンファイン氏に師事し、80年代のアメリカの写真家と多くの交流を持った。
1984年~1990年には、ロサンゼルスにて浄土宗の開教使に着任。
90年に帰国後、2006年に「空蓮房」を設立。2014年には自身が有する多くの写真作品コレクションを
サンフランシスコ近代美術館および東京国立近代美術館に寄贈する。
・畠山直哉
写真家。1958年岩手県陸前高田市生まれ。筑波大学芸術専門学群で大辻清司に師事する。
1984年に同大学院芸術研究科修士課程修了。以降東京を拠点にしながら、
自然・都市・写真のかかわり合いに主眼をおいた一連の作品を制作する。
「Lime Works」、「Blast」、「Underground」、「River Series」などこれまで発表してきた作品シリーズは
いずれも国内外で高い評価を得ており、数多くの展覧会に参加してきた。
その作品は、テート(ロンドン)やニューヨーク近代美術館、東京国立近代美術館など
各国の主要美術館にコレクションされている。