本作「糸をつむぐ」は高橋が友人と交わした何気ない会話から生まれました。
「水に浮くものを撮ったらいい」
「それは具体的にはどんなものを撮ればいいの」
「なんとなく思いついただけ」
「そのうち撮ってみようかな」
友人と知り合ったのは2011年より始まった津波に流された写真を洗浄し持ち主に返却するプロジェクト。津波被害の大きな地域で生まれ育ったその人が言う「水に浮かぶもの」に思い浮かべるものは多々あった、といいます。
その後、自死による友人との別れを経て、交わされたこの言葉はしばらく忘れ去られていました。
個人と生活、他者、風景、家族、記録、など、あらゆる被写体が登場している本書は、撮影機材が8×10インチの大判カメラに変わり、これまでの作品と比べると被写体との向き合い方と表現に変化があります。
そして「水に浮かぶものとは何だろうか」と思いめぐらし探る中で、結婚、出産、子育て、という自身の生活の大きな変化も訪れます。
忘却と追憶を繰り返しながら繋がっていく記憶、そして写真の持つ記録の機能と、未来に残されていくことの普遍的な意味を形にしようとする試みです。