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1989年に名古屋で開催された世界デザイン博覧会に先駆けて、伝説的写真家・柴田敏雄は、先駆的ギャラリストでありツァイト・フォト・サロンの創設者でもある石原悦郎の依頼を受け、エジプトとトルコを巡る一連の旅に参加しました。
本書に収められた写真は、その委嘱によって生まれた作品群であり、1987年に柴田が2度目に訪れたトルコ・カッパドキア地方、そしてエジプト・アスワン西農業道路を旅した際に撮影されたものです。この農業道路はナイル川左岸の運河に沿って、カイロからルクソールまで400マイル以上を結んでいます。
柴田が初の出版物を発表する5年ほど前に撮影されたこれらの写真は、彼にとっては珍しいポートレート的視点も含まれており、その初期作品の中でも特に注目すべきものです。異国の風景と対峙する中で、自然と人工物の交差に対する鋭い観察眼や、光の巧みな使い方といった、後に彼のスタイルとして確立される要素がすでに垣間見えます。
(DEADBEAT CLUB掲載文より)