






ここ数年にわたる生成AIの急速な進化は、人類に新たな可能性をもたらす一方で、未知の脅威も予感させています。
しかし、膨大なデータから生成されるものは、しばしば多様性を欠き、平均化された“典型的”な世界へと向かう傾向にあります。
本作は、画像生成AI「Stable Diffusion」を用い、
「typical(典型的)」という言葉をプロンプトに組み込むことで、AIが“典型的”をどのように捉え、表現するのかを探求しています。
“典型的な平和” “典型的な大統領” “典型的なテロリスト” “典型的な愛”─。
無限の可能性を秘めていたはずの生成AIが生み出す“Typical World(典型的な世界)”には、私たちの未来への問いが隠れています。
編集・造本設計:町口覚
デザイン:清水紗良(MATCH and Company., Ltd.)
237 × 182 mm
32ページ
ソフトカバー
2024年発行
エディション1000
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本作で使用したStable Diffusionは、現在世界中で使われている主な
画像生成AIツールのひとつで、特定の地域の特定の企業が開発している。
どこかの誰かのものの見方の物差しで作られている以上、生成される画像
は一見虚構の世界だけで完結しているようでいて、現実の社会的規範や
政治性、信念体系や偏見がたっぷりと反映されている。
画像生成AIで画像を生み出すプロンプトとして、「typical」に続けて、
私の物差しで選んだ言葉を追加してみる。すると、いまのAI が見せたい
典型的な世界が写し出される。そのTypical Worldは、あらゆる次元で
現実世界と影響し合い、特定の世界観が増幅されている。
光を失った洞窟の闇の中では、自分の影と他者の影を見分けることは 、
難しい。
2024 年9月27日
苅部太郎