バングラディシュの工場で働く労働者たちの力強い姿に魅了され通い続けた吉田亮人の写真集。
装備も付けず素手のまま危険な作業をおこなう場面の中、突如あらわれる大きな船の「スクリュー」は異様な存在感を放っています。
以下、出版社紹介文より
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灼熱の炎、立ち昇る黒煙、煤けた顔を流れる玉の汗、響き渡る男たちの怒声と重油の匂い。 2012年にバングラデシュという国を初めて訪れて以来、幾度も足を運んでは撮影してきたのが 船の「スクリュー」を作る人々だった。 彼らが働いていたのは洞窟のように真っ暗で小さな工房。
そこで大人も子どもも一丸となってマグマのようにドロドロに溶けた真っ赤な液体を、砂鉄まじりの真っ黒な地面に流し込み、冷たくて硬い金属を作り出していた。それはまるで創生神話のような世界のようだった。
静と動、軟と堅、光と影、再生と破壊。
対局にある2つの物事をぐるぐると行ったり来たりしながら、労働者の凄まじい労力を燃料にして生み出されるスクリュー。
この小さな工房に渦巻く途方もないエネルギーに何度も何度も吸い寄せられては、食い入るように彼らを見つめた。
- 吉田亮人
巻末に本書のために小説家いしいしんじが書き下ろした小説「スクリュー」を掲載。装丁は吉田の写真集を何冊も手がけてきた矢萩多聞。
本書の表紙について
表紙写真はリソグラフ印刷機で印刷した写真を貼付けし、タイトル名をスタンプ押印し一冊一冊制作しています。
本書の中で描かれるスクリューが全て人の手によって製作され、ひとつひとつ微妙にその出来上がりが異なるように、本書も一冊一冊人の手を介在させ、労働の痕跡を残すことができないかと考え、上記のような仕様にしました。