写真家・吉川然の初となる作品集『 Water.』を刊行します。
2002年生まれの作家は、小学生の頃から水中カメラを使って写真を撮りはじめました。本作には、これまで吉川がおもに地元・京都での日々や家族と過ごす時間、旅行先などで撮影してきたイメージ37点が収録されています。
デザイン:町口景
編集:川田洋平
発行人・造本設計:町口覚
257 × 182 mm
32ページ
ソフトカバー
2021年発行
エディション700
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君のおかげで今までずいぶんと大変な目にあってきたが、せっかく君にあてて初めて書く手紙だ。あまり恨み言は書かぬことにしよう。君のおかげで散々な目にあってきたとは言え、それだけじゃなかったし、君がいなければ考えられなかったこと、君がいなければ体験できなかったこと、君に助けられたことも何度もある。
君とは他の誰よりも長い時間、誰よりも近くで一緒に過ごしてきた。多分、この関係は一生続くのだろう。だからきっと、誰よりも、ひょっとしたら僕よりも君が、僕を、知っている。僕にとって一番の理解者が、僕にとって一番の天敵とは皮肉なものだ。
君もきっと僕の体を蝕むなんて不本意なんだろう? だって君もこの体の住人じゃないか。それともこれも僕のためにあえてしていることかい? 君はこの写真集を見てどう思った? 僕は君と話したいことが山ほどある。君なんていなければと幾度も思ったし、今でも君のことが嫌いだ。でも君がいるのはなんというか、うまく言えないけど、とても特別なことだと思うんだ。もはや愛着すらある。君と話したい。
できれば返事をくれ、すぐじゃなくていい。何十年後でも、なんなら僕が死んだあとでもいい。できればでいいから返事がほしい。
それじゃ、また。
吉川然