何年も夜間のダクト清掃の仕事をしていた。いつしか使い捨てカメラをポケットに忍ばせ、ダクトの中に潜り込むようになった。
深夜、地下飲食街の天井裏に広がる排気ダクトの中。手元を照らすのは、汚れた作業灯から注ぐ、電球の薄暗いオレンジ色の光だけ。その先に続く暗闇に向かってカメラのフラッシュを浴びせ、ダクトの内部を光らせる行為は妙に刺激的だった。そこに写っているのは、脅迫じみた遠近の階調と不気味な図形の連続だった。
(あとがきより)
◆木原悠介インタビュー
http://hiddenchampion.jp/kihara-yusuke-dust-focus
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