大阪を拠点に建築写真家としても活躍する多田ユウコの初の作品集。
多田の実家は神社で、子どもの頃から日本独特の空間の中で生まれ育ちました。そのことが影響してか、日本画や能、和歌、寺社建築といったものに見られる「間」に興味を持ったといいます。
ここでいう「間」とは奥行きや余韻を感じさせるもののこと。奈良の若草山を鹿が行きかうさまは美しく、のんびりと平和な空気が漂います。人間との距離感はユーモラスです。
若草山の持つ「間」と多田のまなざしによって構成された空間はユートピアのよう。地続きのどこかにこんな別世界があるのでは、と想像をかきたてられます。